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逆走式・ロケ日記 - プロダクション・ノート

番外編
<逆走式静岡ロケ報告はまだ中途ですが、今回は最近のトピックによる番外編です>
関係者試写でお会いした日仏女性研究学会の伊吹弘子さんに、2月に出たばかりの吉行和子さんの文庫本を頂いた。『老嬢は今日も上機嫌』というエッセイ集。吉行さんには、今回の『百合子、ダスヴィダーニヤ』の前に、3本の浜野組作品に出て頂いている。それについて書かれた文章が、収録されているとか。
原著は、3年前に同じ新潮社から刊行された同名の単行本。吉行さんは俳句を詠む俳人でもあり、簡潔で、意が伝わり、余韻の残る言葉で、あまり一般的ではない女優の生活の周辺や、吉行家の人々が語られている。どれも書き出しの一行が素晴らしい。すっと別の世界に招き入れられる。
浜野組関連では『第七官界彷徨-尾崎翠を探して』(98年)に出演して頂いた際の「小説は面白い」というエッセイ。白石加代子さん演じる尾崎翠の親友、松下文子の役だ。この時、尾崎翠の全作品を読んだと言うから、すごい。「第七官界彷徨」について「まず面白い。笑える。切ない」と書かれているのは、さすが。
浜野監督の平凡社新書『女が映画をつくるとき』について触れたのが「映画は生きている」というエッセイ。三百本のピンク映画の先にあった尾崎翠の映画。「私はこの映画に出演したのだが、あまりに威勢がいいのに驚いた。こんな元気のいい女性が、この日本にいたのか、と感じ入り、次の『百合祭』にも出てしまった」。
この『百合祭』(01年)では、ミッキー・カーチスさんとのラブシーンがある主人公を演じて頂いた。さらには白川和子さんとのキスシーンまである。まさに「出てしまった」というのが正直なところかも知れないが、ウィメンズホールでの上映の時には、お母さんのあぐりさんがぜひ観たいと言い出され、お二人で来られた。その後の「親孝行ができた」という吉行さんの感想に唸ったものだ。
『こほろぎ嬢』(06年)の撮影中に書かれたのが「鳥取にて」というエッセイで、その直前に亡くなられた妹の詩人・作家の吉行理恵さんについても語られている。このエッセイは一部を略して、理恵さんの尾崎翠全集の書評とともに、映画のパンフレットに収録させて頂いた。その完全版というわけである。
理恵さんの遺されたお金を、楽しみにしていた映画『こほろぎ嬢』のために使ってほしいと浜野監督に託されたことは、監督が何度も感激をもって語っているところだ。
なお、末尾に収録された「カミサマノオハナシ」というエッセイは絶品。理恵さんを回想しながら、現在の自らの心境を語っているが、読み終わって言葉を失う。おそろしい。

今回のロケは、ドラマ部分は全て静岡で撮影されたが、実景(普通にいえば情景)はその後、実際の舞台であった福島県の猪苗代湖と磐梯山を撮影した。2泊3日で猪苗代湖の回りをグルグル回ったのだが、宿舎とした天神浜の「こはんゲストハウス」も大震災と原発事故で大きなダメージを受けたようだ。以下は同ハウスのブログから一部抜粋。
「地震だけでも酷いのに、原発問題で事態が最悪の状況になってしまいました。福島も観光業も、もう終わってしまいそうですね。
ようやく一年を通じて営業して、集客も上手く行ってさあ、ここからがんばって工夫して、更なる上積みをしたいと思っていたのに、これで全部吹き飛んでしまいました...。
ここからがんばっても、震災前の状況に戻ることは無いでしょう...。自分を取り巻くいろいろな状況を見ると、宿をやめる事を考えなければなりません...。」
奥さんがいればもっとも手広く営業できるんだけれど、と笑いながら、すべて一人でこなしていた中年独身オーナーの笑顔を思い浮かべると、胸が痛む。最初わたしは「ごはん~ハウス」と勘違いし、食事をするところだと思い込んでいた。
実家は新潟だが、福島県内のホテルで修行したオーナー氏が、バブル期に建てられた社宅を改装してペンションにしたと言う。天神浜や小平潟天満宮も近くにあり、もう一度個人的に足を伸ばしてみたいと考えていた。
オーナー氏は「嵐が弱まった所で、少しアクションが起こせるようになるでしょう。何年かかるか...。」とも書かれているので、再び天神浜でお会いできることを、強く願う。完成した『百合子、ダスヴィダーニヤ』も観てもらいたいし。

早朝の天神浜。海岸とはまた違った、湖の静謐な光景だ。風評被害だけでなく、実害が猪苗代湖畔に及ぶことだって考えられる。海外メディアは「フクシマ」を連呼し、チェルノブイリ並みの扱い。福島県の失ったものはあまりにも大きい。東電は、猪苗代湖や磐梯山に何をしてくれたのだ。

猪苗代湖の夕景。映画『百合子、ダスヴィダーニヤ』では、名手小山田カメラマンによって、福島県の中央に位置する猪苗代湖と磐梯山の無言のスピリットが見事に描かれている。

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(11) 熱海・西紅亭

10月14日(木)は、熱海・西紅亭(せいこうてい)でのロケ初日。百合子と、夫の荒木茂が暮らす青山の家でのシーンが撮影された。
役者は百合子役の一十三十一さんと、荒木役の大杉漣さん。今回のロケ報告は、スチール構成で「大杉漣劇場」です。

別居、離婚の話し合いが、今、クライマックスを迎えている。
中條百合子は、17歳で「貧しき人々の群れ」でデビューし、天才少女作家として文壇の注目を集めた。18歳で父に同行してアメリカに遊学し、19歳の時に15歳上の古代ペルシア語の研究者、荒木茂とニューヨークで結婚。
荒木は20歳でアメリカに渡り、15年にわたって辛酸を舐めながら苦学したが、ぱっとした業績も残せず「大学図書館の奥の苦行僧」として朽ち果てる覚悟でいた。
そんな彼の前に現れたのが、光り輝く新進女性作家の百合子だった。

百合子と出会い、彼女と結婚することによって、荒木は日本に帰り、女子学習院教授の職も得ることができた。
彼にとっては、百合子との結婚生活は社会的な生命線でもあったので、なんとしても離婚を承諾するわけにはいかない。全身全霊をもって繋ぎ止めようとする。
しかし、百合子の心はすっかり芳子に傾いていて、彼の元には帰って来ない。苦悩する荒木は叫ぶ、「ベイビ! カムバック!」。

百合子の小説「伸子」では、荒木(小説中では「佃」)は社交性に乏しい陰気な男として描かれている。
明らかなモデル小説だが、まだ離婚問題も解決していない段階でこのような小説を発表されるのだから、荒木もたまったもんじゃない。実際、百合子に控えめな苦情を書いた手紙も残されている。
もっとも、芳子と別れた後に書かれた「二つの庭」や「道標」では、今度は芳子(小説中では「素子」)が辛辣に描かれている。未来に向かって前進する百合子にとって、過去は清算されるべきものなのだろう。

どうしても別れたいと言う百合子に絶望した荒木は、やけのヤンパチで飼っていた小鳥を鳥かごから放す。二人で可愛がって来た小鳥たちだ。これが小説「伸子」の最後のシーンとなる。
どこから見ても陰々滅々、しんねりむっつりの中年男で、芳子の回想でもボロクソな言われ方をしている。しかし小説「伸子」を素直に読んでいると、けっこう可笑しい。
サンフランシスコからニューヨークまで流れ、アメリカ・ゴロなどと陰口も叩かれた荒木。百合子の周辺の誰もが結婚には絶対反対だったのだが、小説の意図しないところで妙に子供っぽいところ、ユーモラスなところが随所に表われる。
20歳でアメリカに渡ったのも、それなりの理由があったのだろう。その後、孤独な異国暮らしを続け、百合子と日本に帰って来ても日本社会には馴染めなかったに違いない。そのギャップが巧まざるユーモアを生む。「伸子」は噴き出しながら読める小説でもあるのだ。

大杉さんは、その荒木の喜劇的側面を的確にキャッチし、苦悩する荒木から笑える荒木まで、幅のある荒木茂像を作り上げた。
撮影現場でも「ほんとにおかしな野郎だね、荒木って」などと言いつつ、楽しみながら演じていたように見える。
下の写真は、なんとか一度は百合子と和解し、二人でやり直すための新居に引っ越す準備をしているシーン。心浮き浮きだが、翌朝にはショックな電報がやって来た。

なお、荒木の名誉のために言っておけば、彼は「伸子」に描かれたような、それだけの人物ではなかったようだ。古代東洋語という地味な分野の研究の先駆けであり、また帰国してからは学習院大学の英語教授として、新しいメソッドの英語教育の普及に貢献している。
百合子と離婚後、年下の女性と再婚し、子供ももうけるが、長生きしないで亡くなった。映画の中でも結核を発症するシーンがあり、百合子には全然本気にされないが、結局この病気が死因だった。

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(10) 熱海・西紅亭
クランクイン以来、休みなしで働いてきた撮影隊の疲れやストレスが、ピークに達したと思われる10月15日(金)。
この日は、熱海のホテル池田別館・西紅亭(せいこうてい)での撮影2日目となる。普段はお茶会などで使われている古い日本家屋を、東京・青山の荒木と百合子の家に見立て、2日間にわたって撮影した。

亀裂が深まる荒木と百合子。いやいや青山の家に戻ってきた百合子を、荒木は全身の喜びで迎え、彼女との関係を修復しようと躍起になる。これほど愛されているのに、百合子はどうして荒木を捨てようとするのだろう? 
彼女にとっては、自分を成長させてくれるものが全てだった。妻を愛し、家庭を愛する男は「精神生活の荷物をすっかり下ろして、休みたがっている」と、妻によって批判される。

二人の間の柱が、心理的懸隔をシンボリックに表現しているようだ。西紅亭の二階が、荒木の部屋と、二人が食事などする茶の間として使われた。
宮本百合子の小説「伸子」では、人付き合いの悪い鬱屈した男として描かれている夫、荒木茂(小説では「佃」)だが、大杉漣さんはその喜劇的側面も併せて、奥行き深く表現してくれた。

映画初出演で、主役の一方、中條百合子を演じたシンガーソングライターの一十三十一(ひとみ・とい)さん。時にはエゴイスティックにさえ見える百合子の、作家として・人間として成長することへの強い願い、意欲、野心を見事に体現した。
撮影中、地元TVのインタビューに答えて「これまでは(シンガーソングライターとして)世界の中心にいると思っていたけれど、撮影の現場ではそうはいかず、戸惑った」と発言していたが、ステージの中心にいる人だからこそ、大正時代の女性作家の剄(つよ)さを表現できたのだろう。

この日は、チーフ助監督のS氏が撮影から降りるという椿事が出来(しゅったい)した。朝、合宿している畑毛温泉から熱海に向かうロケバスのなかで、浜野監督と口論になり、車から文字通り降りたのだ。
監督とチーフ助監督の対立はクランクイン当初からあって、何度か小爆発したが、遂にこの朝、大爆発を迎える。幸い、ロケは山場を越えかけていて、S氏もまたその後の連絡を取り合ってくれたので、この後の撮影に支障は出なかった。
この日の翌々日は初の撮休となり、ずっと底流していた二人の対立がもたらす緊張感から解放されたように、現場が伸び伸びしてきたのは皮肉な成り行きだった。(撮休明けのマッケンジー邸の撮影から、急きょ東京から呼び寄せられた演出部応援のK君が参加している)
なお、この監督とチーフ助監督の二人は、前作『こほろぎ嬢』(06年)でも、鳥取でつかみ合いに近い喧嘩を演じている。お互いに予測できなかったのかな?

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(9) 掛川の加茂荘にリターン

10月16日(土)。翌17日は今回の静岡ロケで初めての撮休で、10月3日のクランクインから2週間、1日の休みもなく撮影に明け暮れた。
ようやく撮休となる前日、静岡県東部の函南(熱海と沼津の中間)の宿舎から、静岡県西部の掛川市に遠征する。
掛川市の加茂荘は、祖母お運の住む福島県の安積・開成山の別荘と設定された、この映画のメイン・ロケセット。ロケ前半に5日ほど撮影しているが、この日は主に郡山駅から開拓地の開成山までやってくる人力車のシーンが撮られた。

人力車を引いてくれるのは、掛川城の前で実際に営業している本物の車夫さん。人力車持参で協力してくれた。感謝。
問題は開拓地につながる「荒野」(台本上の表記)で、どこに大正末期の荒野らしきものが存在するか、県内の各フィルムコミッションが捜してくれた。しかし、実際に撮影する機材の運搬などを考えると、とんでもない奥地に入ることもできない。
最終的に、加茂荘の前に広がる加茂花菖蒲園の山側を使って撮影することに落ち着いた。

大杉漣さん演じる百合子の夫、荒木茂が早朝人力車でやってくるシーン。走る人力車を、先行する小型トラックの上から撮影するのだが、人力車のスピードと撮影車のスピードを合わせなければならない。
何度もテストを重ねて、息を合わせる。へばる様子を見せない車夫さんは、まさしくプロだった。

荒木はなぜか学習院大学教授の制服を着て、百合子と芳子がいる祖母の家に早朝乗り込んで来た。彼にとって最後の勝負だったのだろう。ここから緊迫のクライマックスが始まる。
百合子の小説「伸子」では喜怒哀楽の乏しい陰々滅々の夫として描かれ、後年、芳子には男失格と烙印を押された荒木だが、そこにはやはり「恋する二人」のバイアスがかかっている。実際には、それだけの人物ではなかったようだ。
その辺りの明暗を、大杉漣さんが生き生きと演じている。

人力車で帰る芳子を、百合子と祖母が見送る。祖母役の大方斐紗子さんは天才的な舞台女優で、浜野組では吉行和子さんと共に毎回出演して頂いている。『百合祭』の、奇声を発する最高齢のお婆さん役が目に焼き付いている人も多いだろう。
大方さん、実は福島市の出身で、今回は古い方言の面でもご指導頂いた。NHKの連続ドラマの方言指導で、賞ももらっている本格派なのだ。

芳子に会いたい一心で百合子が上京した夜、行き違いで開成山にやって来た荒木茂。別居したいという百合子からの手紙を受け取り、驚いて駆けつけたのだ。
ここで初めて、百合子と芳子のただならぬ関係を知る。

初めて芳子が開成山にやって来た日。京都生まれで、東京に住んでいるシティ派の芳子には面食らうような開拓地だ。不安を覚える。
実際には大風、大雨で、百合子の「あなたはいつも嵐と共に現れるのね」(大意)という名台詞もあるのだが、さすがに夜間オープンの、走る人力車に大雨を降らせたり、突風を吹かせるのは無理だった。

フィルムサポート島田の清水さんが手配してくれた高所作業車で、人力車が走ってくる野道と周辺の山裾を照明する。
左端が機材車。右端に小さく見えるのがカメラや監督を乗せた撮影車で、その後ろを人力車が走る。浜野組史上、最大規模と思われるが、すべて加茂花菖蒲園の全面的なご協力のおかげです。


http://kamohanashobuen.blog61.fc2.com/blog-date-201010.html

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(8) 旧マッケンジー住宅にて

10月18日(月)は静岡市の海岸近く、駿河区高松というところにある「旧マッケンジー住宅」で終日撮影。
戦前の洋館で、今回はニューヨーク時代の百合子と荒木の回想、および荒木が女子学習院で授業をしているシーンが撮られた。
この建物は国登録有形文化財で、撮影にこぎ着けるまでけっこう紆余曲折があった。管理する市の文化財課は、当初難色を示し、映画のロケを担当してくれたシティプロモーション課が懸命に調整してくれた。
自分たちのことながら、撮影隊というのも無理難題を言うので、市役所の職員諸氏も面食らったことだろう。お世話になりました。

ニューヨークで百合子と結婚した夫、荒木茂役の大杉漣さんが、女子学習院で古代ペルシア文化の授業をするシーン。
大正時代の衣装を身に着けた女子エキストラの皆さんが、緊張して机に向かっている。その前で、大杉さん、軽妙なジョークで彼女たちをリラックスさせる一方、咳き込んで血痰を吐くというシリアスなシーンを見事に演じた。
荒木は、実際には女子学習院で英語を教えていたという。学習院大学には荒木が教授として在籍した当時の資料が残っていて、同大学には制服の考証や門の追撮などでも、たいへんお世話になった。

エキストラの皆さんと大杉さんの記念写真。エキストラを集めてくれたのは、フィルムサポート島田の清水唯史さん。清水さんには静岡県西部の島田市はじめ、掛川市、浜松市など、地元に近いエリアの撮影だけでなく、静岡ロケ全般にわたって、もの凄くお世話になった。
また、この日は石垣詩野さんを代表とする「支援する会・静岡」の皆さんが、お昼の炊き出しを行ってくれた。しかし、有形文化財の旧マッケンジー住宅では、煮炊きはもちろん食べることもできない。敷地外の駐車場で、とても美味しいお米を炊いて握ったお握りや鍋物が振る舞われた。

旧マッケンジー住宅の骨董室を、荒木の研究室に見立て、孤独な荒木の呟きを撮影する。静岡市立中央図書館から大量の古い洋書を借り出して、セッティングした。これも市のシティプロモーション課の紹介によるもの。
弱ったのは、荒木の背後の棚の鍵が3個紛失されていて、そのなかを飾るためには専門の鍵屋さんを呼ばなければならなかったこと。ひとつ開ける(鍵をカッターで切る)のに八千数百円かかかるうえ、市の文化財課の要望で新しい鍵を付けることになり、少ない予算のなかで失費した。
よほど鍵屋さんにタイアップを申し入れようかと思ったが、あまりにもケチくさいので断念。

百合子と荒木の結婚写真を再現。二人の回想は、フィルムとスチル写真で撮られたが、スチルの撮影と現像を、掛川市在住のカメラマン、小川博彦さんが担当してくれた。(彼は「支援する会・静岡」が製作するポスターの撮影も担当)

実はこの日が、大杉漣さんのオールアップの日。日本でもっとも忙しい役者さんだが、島田市の大井川鐵道、掛川市の加茂荘、熱海市の起雲閣や西紅亭など、静岡県内各地に来て頂いた。
関係者やエキストラの皆さんにも気さくに声をかけ(スタッフには何度にもわたる差し入れ!)感激している人たちも多かった。静岡県内の大杉漣ファンは急増したのではないだろうか。

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(7) 洞口依子さん登場

10月19日。畑毛温泉のN氏邸を、野上弥生子邸に見立て、終日撮影。戦前、伊豆に文化人や芸術家の別荘を作る計画が実行され、N氏宅はそれが今に残った。有形文化財に指定されているお宅で、Nさんご夫妻は日常生活されているが、ロケハンで思いがけないことが起こった。
静岡ロケに最初から最後まで帯同してくれた静岡東部のフィルムコミッション「花道」の土屋学さんが、ご夫妻に浜野監督を紹介すると、奥さんが「あらぁ! 浜野さんだったの!」。静岡市内の中学校時代の同級生だったのだ。全面的な協力が得られたことは言うまでもない。

この日は、野上邸で百合子と芳子が初めて出会うシーンや、女性の小説家同士で愛や性についてディスカッションするシーンなど。
野上弥生子役で洞口依子さんが登場した。弥生子は百合子の先輩小説家として親しく付き合っていたが、この日訪ねて来た芳子を紹介し、二人は急速に親しくなって行く。運命的な出会いだった。

弥生子はスケールの大きな知性的作家で、俗世間と交わることを避け、歴史や人生を観照しながら、書斎で執筆活動を続けた。百合子と芳子を引き合わせた後も、ボルテージの上がる二人の恋の行方を見守りながら、交流を続けた。やがてやってくる無惨な別れを、早くから予見していたのも弥生子だった。

洞口さん、大正時代の着物がよく似合い、知性派作家の風格が自然とあらわれていた。対等にディスカッションしながらも、二人を見る眼差しに、先輩作家としての愛情や気遣いがあふれている。
雑誌『婦人公論』の来年2月号に、吉行和子さんとこの映画について対談した記事が掲載されるので、お楽しみに。

女中さん役で友情出演してくれたのは、いろんなジャンルに神出鬼没の里見瑤子さん。浜野監督とも長い付き合いだ。

この日は雨が心配されたが、無事に庭での撮影を終えることができた。夜は、弥生子が部屋で日記を書くシーンを室内で撮る。
弥生子にしろ百合子にしろ膨大な日記を残しているが(芳子の日記は未刊行)世間に発表する小説やエッセイ以外に、それに匹敵するような日記を書き付けているのは驚異的。

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(6) 沼津倶楽部にて

10月20日は朝から終日、沼津市にある「沼津倶楽部」で3つのシーンを撮る。正式には千本松・沼津倶楽部といって、会員制の宿泊施設と、大正時代に作られた数寄屋造りのサンルームを使ったレストラン「ヴィーア・サクラ」から成る。
まずは、数寄屋造りの奥まった一室で、二人が3年間のソヴェトーロシア(百合子風に言うと)留学から帰った後に訪れた、無惨な別れのシーンを撮影する。

時系列で言えば、映画の舞台である1924年からすると8年後の現実。プロレタリア文学運動に邁進する百合子と、一歩距離を置く芳子に、決定的な別れが待っていた。
レストラン棟は以前高級割烹だったというが、沼津市に住んでいてもなかなか訪れる機会が少ないセレブ用の施設らしい。近代的な宿泊棟も、会員か会員の紹介でなければ泊まることができない。

今回撮影できたのは、沼津市のフィルムコミッション「フィルム微助人(びすけっと)」を中心に沼津市や沼津商工会議所が展開する「さぁ来い、ハリウッド!大作戦~ロケでまちが元気になるプロジェクト」(通称"ハリプロ")の紹介によるもの。
本作が静岡オールロケになったきっかけが、今年2月に行われたハリプロ主催のロケーション・ツアーだった。最終的には、沼津エリアでの撮影はこの沼津倶楽部と活版印刷の文光堂印刷だけとなったが、静岡東部に限らず、ロケ全般にわたって支援を受けた。

この日も、あいにくの雨のなか、ハリプロはテントを張ってお昼の炊き出しをしてくれた。海産物をアレンジした料理がとても美味しく、キャスト、スタッフ、みんなが舌鼓をうった。

レストランで撮影したのは、百合子と芳子がお茶を飲みながら話し合うディシーンとナイトシーン。大正時代の衣装を着たエキストラは、すべてハリプロの手配による。また二人が食べるケーキもハリプロ手配で、市内のケーキ屋さん特製のもの。

せっかく「さぁ来いハリウッド!」と呼びかけているのに、わたしたちのような貧乏撮影隊が行って、たいへん恐縮でした。「フィルム微助人」の皆さんや沼津市役所、商工会議所の方々の熱意と馬力、そして朝から夜遅くまで心置きなく撮影させてくれた沼津倶楽部に、心から感謝します。

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(5) 芳子の家の玄関を別撮り

10月21日の朝イチの撮影は、なんと合宿所である畑毛温泉の民宿、西館(にしかん)の別館。
芳子の家はすでに島田市博物館分室で、部屋のなかを撮っているのだが、玄関の出入りだけを別撮りした。
上の写真は、荒木と百合子の家から、百合子がやっと帰って来た時のシーン。待ちかねた芳子が百合子を迎える。

まだ美術部の手が入らない時の西館・別館。この玄関を入って、階段を上がるまでが撮影され、階段を上がって部屋に入るところから、遠く島田市の博物館分室の二階につながる。
映画のマジックだが、やはり建築の様式は似ているようだ。
撮影隊は10月12日に、静岡県西部の島田市山中(?)にある野外活動センター「山の家」から、静岡県東部の伊豆・畑毛温泉に移動して来た。スタッフは西館で合宿し、役者さんたちは近くのホテル「大仙家(だいせんや)」に宿泊。

役者さんたちのホテルだが、好意でスタッフも広い温泉に入れてもらった。露天風呂や野外サウナもあって、長いロケの疲れを癒すことが出来た。ありがとうございました!

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(4) モスクワへ

10月21日のお昼前後から、函南町の倉庫に作ったシベリア鉄道のセットで、来るべきソビエト留学に向かう百合子と芳子のシーンを撮影。今回映画化した1924年(大正13年)の時点からすれば、数年後のことになる。
シベリア鉄道のセットといっても、一車両作るわけにもいかず、コンパートメントの内部だけを作った。美術部の労作。

美術部の倉庫としてお借りした二階が、スタジオとなった。斡旋してくれたフィルムコミッション『花道』の土屋氏は、このセットを記念に残せないか大家さんと交渉したが、この二階も今後使う予定があって無理だった。労作だけに残念だが、それが映画のセットの宿命だろう。
翌朝、ポスター撮りが行われた時には跡形もなくなっていた。

窓外のシベリアの猛吹雪を演出する人たち。雪を流しているのが、映画美術の業界で知らない人のいない(?)佐々木さんだ。百戦錬磨の実力者だが、何か一言ジョークを言わないではいられないお茶目ぶりも発揮。

希望を抱いて向かったソビエト留学。民間の日本女性としては、この二人が初めてだった。芳子はロシア語を学んでロシア文学者としての基礎を固め、百合子は新しい社会主義国建設を目の当たりにして思想を確かなものとした。帰国後、酷い別れが待っている。

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(3) 沼津の印刷所

10月21日の夕方から、沼津の文光堂印刷で芳子が出張校正しているシーンの撮影。印刷機を操作しているのは、実際にこの会社で活版印刷機を担当している職人さん。百合子と話している営業担当者は、この会社の社長さんで、お二人にエキストラ出演をお願いした。

大正・昭和初期には活版印刷が主流だったが、現在ではオフセット印刷が主流。今でも活版の印刷機と活字を使っている印刷会社は少ない。静岡県内で探し、出会ったのが文光堂印刷。ここでは、工場の隅に戦前にも使われたなんと手差し(人の手で給紙する)の活版印刷機を残し、現役で使われていた。

『愛国婦人』を、芳子が出張校正(印刷所に編集者が出張して校正する)しているシーン。実際には編集者用の出張校正室があり、食事なども接待されたが、ここでは印刷の現場に来て最後の直しをしている設定とした。

これが手差しの印刷機。浜野監督が、印刷の職人さんなら手がインクで汚れたりしているのではないだろうかと言ったら、この方はキッパリ「それは下手な証拠」。上手な職人さんなら手を汚したりしないという。納得。

撮影後に、文光堂印刷の皆さんと記念撮影。ありがとうございました!

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(2) 一碧湖
一碧湖畔を歩く百合子と芳子 湖畔に佇む二人。
実は猪苗代湖を想定したシーンなのだ

クランクアップした10月22日は、なんと朝6時半から宿舎近くの函南町の倉庫でポスター撮りを行い、その後、一碧湖まで足を伸ばして百合子と芳子のシーンを撮り、それから前回報告した熱海の石畳の坂道に向かうという、何とも慌ただしいスケジュールだった。
ポスターのデザイン・制作は「支援する会・静岡」が担当してくれるのだが、プロデューサーの石垣詩野さんとデザイナーの利根川初美さんは静岡市から、カメラマンの小川博彦さんに至っては静岡県西部の掛川市から来てくれるのに、東部の熱海に近い函南町、午前6時半を指定する撮影隊の非情!
もちろん、撮影される一十三十一さんと菜葉菜さん、それにヘアメイクと衣装のチームは5時起きで準備する。映画のロケは、やはり非日常的なものだと痛感せざるを得ない。
小川さんはパソコンを持ち込み、利根川さんのデザインにしたがって撮影しながら、パソコン画面で確認して行くので、想定していたより進行は早かった。その一方で、浜野監督をはじめとする撮影本隊は一碧湖に向かい、ロケーションを確認する一方で、実景の撮影などを行っていた。

百合子の祖母が住み、百合子が処女作の「貧しき人々の群れ」をはじめとする小説を書いた福島県安積の開成山は、猪苗代湖から安積疎水によって水を引いた開拓地だ。実際に百合子と芳子の二人も、猪苗代湖まで遠出している。静岡ロケがアップした後、撮影部を中心とする実景班は広大な猪苗代湖の周囲を廻って、3日間撮影した。
その実景につながるのが、この一碧湖のシーン。伊東市に入るこの湖まで、スケジュール的に撮影に行けるかどうか危ぶまれたが、最終日に実現した。大正時代が舞台のこの映画で、戦後の人工物が見えては困るのだが、奥の方に静謐な一帯があった。
なお、上の写真の対岸に見える緑のなか、右手の方に小さな穴が開いているのがお分かりだろうか。
実は対岸の向こうにも湖面が広がっていて、左下の写真のように、穴の向こうに赤い鳥居が見える仕掛けになっている。
もちろん映画の画面上は登場しないが、何か有り難い意味があるのだろう。

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(1) クランクアップ

主役のお二人の晴れやかな表情

さすがの「鬼の浜野監督」も会心の表情。
後ろで手を叩いているお茶目な人は照明技師さんです

3週間を越える静岡ロケも、10月22日、熱海の石畳の路上でクランクアップした。
浜野組『百合子、ダスヴィダーニヤ』がクランクインしたのが、10月3日(日)。
島田市の北河製品所で、芳子が百合子に電報を送る郵便局のシーンと、芳子が働く『愛国婦人』編集部のシーンが撮られた。
それからロケ隊は不眠不休に近い日々を送りながら、静岡県内を東進し、熱海市の路上でクランクアップを迎えたのだ。
石畳の坂道を、百合子役の一十三十一さんが上がってくるシーンで、これがラストカット。
オールアップの花束を、浜野監督が一十三十一さんと菜葉菜さんに贈り、監督にも熱海の支援する会から花束が贈られた。
それにしても苦難を乗り越えた表情の、なんと晴れ晴れとしていること!
これから静岡ロケの日々を、クランクインに向かって逆上がり式に報告していきたい。

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